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涙のあとの未来
ーーー主要登場人物ーーー
主人公
二福ヂン(ニムラ ヂン)
本作の主人公。
喜怒哀楽、感情というものがわからない。
そのように表現することは出来る。
誰にもバレていない。
だから、誰の事も気になる事もない。
好きや嫌いという事もわからない。
一番苦手な質問。
「ねぇ、お前の好きな人って?」
ヒロイン
一木 来杏(イチキ ラン)
本作のヒロイン。
不慮の事故を経験している。
人の事を見抜く為、
”気味が悪い”と言われてしまう事も。
笑顔で居る事が多い為、
明るい性格と思われがちだが、
何事も演じる主人公からは、
その”作り笑顔”を見抜かれてしまう。
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僕は、人を好きになれなかった。
この名前も。性格も。
何もかも。作り物の感じがして。
ずっと、相手の求める答えが見えていて。
それを”演じている”だけ。
何も感じないんだ。
普通の20年間だったとは思う。
普通に「友人」と呼べる人も居た。
普通に「恋人」と呼べる人も居た。
普通にバイトをしたり、部活動をしたり。
ごくごく平凡だったとは思う。
当の僕自身が何も感じない事以外には。
喜怒哀楽が無いんだ。
そういう風に見せる事は出来る。簡単だ。
だが、誰にも気付かれた事は無かった。
男A
「ねぇねぇ、これからカラオケ行かね~?」
女A
「イイネー!行こ行こ!!
ニムヂも行こっ??」
ヂン
「良いねぇ。行こうか。
今日、バイト休みだし。」
ニムラヂン。
略してニムヂ。
良くある名前の略し方だ。
何となく入ったサークルで出来た
「友人」たち。
本当に我ながら、
溶け込むことは上手い。
そう思っている。
―――
今日は、どう過ごそう。
(歌う気分じゃあない)
って、この前に言ったら、
(え?何しに来たんだよー!)
って盛大に笑われてしまった。
だから、
(僕、職人気質だから。
喉の調子に合わせてるんだ。)
そう返したら、
(・・・え?プロの人?)
だなんてマジレスされたし。
そうハードルが上がると、
普通は歌いにくいだろうが。
関係なく歌ってみたら。
(・・・・え、普通に上手い。
何にも言えないんですけど・・・)
と、若干引かれた。
何が正解だったんだろう?
―――
カラオケ屋に到着した。
なんだかんだで、
男女で10人くらい集まったようだ。
何人か見知らぬ面子も居るようだ。
興味は無いが。
各々で席に着く。
大体、先陣を切って歌いたがるのは
いつもの面子。
特に歌いたい気持ちも無いので、
デンモクが回ってくるタイミングを
先読みして絶妙なタイミングで、
(ちょっと、トイレ・・・)
このタイミングの取り方に関しては、
誰にも負けないと思っている。
そんな勝負は無いと思うが。
ヂン
「・・・ふぅ。」
周りとの付き合いっていうのも大変だ。
ただ、ノリが悪い人に見せない手段は心得ている。
来杏
「・・・ねぇ、キミ。
二福(ニムラ)君、だっけ。」
・・・誰だ?この娘。
声は、可愛らしい声と呼ばれる声なのだろう。
僕にはその辺りは良くわからないが。
一つ、気になったのは、彼女の笑顔。
ヂン
「そうだけど?君は?」
来杏
「アタシは、一木来杏(いちきらん)。
数字の一に、樹木の木。
行来の来に、あんず。
いちきらん。
よろしくね。」
ヂン
「ああ。らんちゃん?
よろしく。」
来杏「ちゃんは・・・。
なんか寒気がするから。
呼び捨てで良いよ。
あ、そうそう!
君に突然だけどさ、
聞きたいことがあるんだ。」
ヂン
「なにかな??」
来杏
「・・・演じてるだけって。
楽、かな??
なんか、見てるだけで
シンドそう。って。」
ヂン
「ッ・・・?!?!?!?!」
・・・・え???ナゼ、ワカッタ???
ヂン
「・・・何の事?」
ヤバイ、声が上ずった・・。
来杏
「・・・あれ?それが君の”素の声”?
・・・そっちの方が素敵だと思うよ?」
ヂン
「・・・?」
理解不能理解不能理解不能。
汗が止まらない。
誰にも見抜かれた事なんて無かった。
思考混乱思考混乱思考混乱。
何だ??これは??何だ???
おそらく、人生初の感情。
困惑。
来杏
「良い顔してる。
それ、忘れちゃダメだよ?
今はこれくらいにしておいてあげるね♪
またね~♪」
ヂン
「・・・???」
何だ、あの女は・・・?
意味がわからない・・・。」
(続く)